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十一 - 17
と電光影裏(でんこうえいり)にさか倒れをやるかも知れないぜ」

    「とにかくこの勢で文明が進んで行った日にや僕は生きてるのはいやだ」と主人がいい出した。

    「遠慮はいらないから死ぬさ」と迷亭が言下(ごんか)に道破(どうは)する。

    「死ぬのはなおいやだ」と主人がわからん強情を張る。

    「生れる時には誰も熟考して生れるものは有りませんが、死ぬ時には誰も苦にすると見えますね」と寒月君がよそよそしい格言をのべる。

    「金を借りるときには何の気なしに借りるが、返す時にはみんな心配するのと同じ事さ」とこんな時にすぐ返事の出来るのは迷亭君である。

    「借りた金を返す事を考えないものは幸福であるごとく、死ぬ事を苦にせんものは幸福さ」と独仙君は超然として出世間的(しゅっせけんてき)である。

    「君のように云うとつまり図太(ずぶと)いのが悟ったのだね」

    「そうさ、禅語に鉄牛面(てつぎゅうめん)の鉄牛心(てつぎゅうしん)、牛鉄面の牛鉄心と云うのがある」

    「そうして君はその標本と云う訳かね」

    「そうでもない。しかし死ぬのを苦にするようになったのは神経衰弱と云う病気が発明されてから以後の事だよ」

    「なるほど君などはどこから見ても神経衰弱以前の民だよ」

    迷亭と独仙が妙な掛合(かけあい)をのべつにやっていると、主人は寒月東風二君を相手にしてしきりに文明の不平を述べている。
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